勉強は家を建てることと同じ(2015/09/13)
夏休み明けのテストも終わってゆっくり過ごせるようになりました。 テストの結果はまずまずでした。 最近はここでお子さんたちの頑張りを紹介していませんが、 みなさんの点数が悪いわけではありません。 すごく良いというわけでもありませんけどね。 例年通りという感じです。 同業者のホームページとか広告のチラシとか目にする機会が多いのですが (やはりライバルの情報は気になります)、 「○○点上がりました」とか「内申点○○アップ」と大きくアピールされています。 それを見ると「自画自賛で嫌な感じだな」と思うときがあるのですが、 自分のホームページを読み直してみると同じことが書いてあって、 自己嫌悪に陥ることがあります。 私のホームページをご覧になって、 「何を自慢してるんだ?偉そうに」と思っていらっしゃるかたもきっといらっしゃるでしょう。 でも、こういう情報を公開すると問い合わせが増えるのは事実でして、 背に腹はかえられず、、。ということで、今日も自画自賛が入ってしまいますが、 もし不快に感じる方がいらっしゃいましたらすみません。
私が教えるお子さんは、 私以前に2つ3つの塾なや家庭教師に習って成績が上がらなかったというお子さんがほとんどです。 体験授業に伺うと過去の塾や家庭教師の遍歴を詳しくお聞かせ下さいます。 今まで教えた中で、私が初めての家庭教師(塾も含めて)という子は1人しかいません。 こう書くと、私の教え子が「頭の悪い子」と思われてしまいそうで気が引けるのですが、 もちろんそうではありません。 だって、本当に頭が悪かったら点数は上がらないでしょう。 昨年は、あるお母様から「今までにこんな成績が悪い子教えたことはありますか?」と 体験授業でご質問を受けましたが、このお子さんはある教科のランクが半年で5から10に上がりました。 「5教科合計で初めて400点を超えた」とその子も喜んでいました。 よく頑張ってくれたのですが、 私の力及ばず受験がうまくいかなかったので、 このホームページでご紹介するタイミングを逃してしまいました。 今まで点数が上がらなかった分、 点数が上がるとお子さんも親御さんもとても喜んでくださいます。 今、教えている高校生のお母様からは「やっと見つかった」と言って頂いて、 正直、鼻高々。ではなく家庭教師冥利に尽きます。 このお子さん、学校の授業中はよく寝ているらしいのです。 それでもテストの点数は取れているので学校の先生が不審に思われたのでしょう。 保護者面談で学校の先生からそのあたりの事情を聞かれて、 家庭教師を雇っていることをお話になられたようで、 「優秀な家庭教師ですね」と学校の先生がおっしゃっていたとお聞かせ下さいました。 私は褒めて頂けてうれしいですが、学校の先生は皮肉を込めておっしゃられたと思うので 学校の授業にはきちんと取り組んだほうが良いですけどね。このお子さん、普段はあまり勉強しませんが、 テスト前になると何時間も勉強を頑張ってくれます。
では、実際にどうやって私が教えているかというと、 本当にシンプルなことを1つ1つ行っているだけです。 私は、勉強は家を建てることと同じだと思っています。 実際に家を建てたことはないですけどね。 家どころか犬小屋すら作ったことはありません。 ちなみに私は手先が不器用なので大工仕事が苦手です。 のこぎりで木材をまっすぐ切るのは大の苦手。 私が家を建てたら風通しの良い隙間だらけの家になるでしょう。
話を本題に戻しまして。 家を建てるにはまず木材や道具が必要ですね。 木材や道具にあたるものが、単語、用語、公式といった知識です。 これらがなければ絶対に家は建ちません。 でも、中には道具を持ってこない子もいるわけです。 そのお子さんに「どうして道具を持ってこないんだ! 君は道具を持ってないから家は建てられないよ」と言ったって始まりません。 ですから、まずは道具を一緒に準備するところから始めます。 例えば用語だったら、 「今からこの5個覚えよう。一緒に声を出してね。一緒に書くよ~。」 と繰り返し覚えてもらって、そのあとで覚えられたかシートで隠して確認、 覚えられていたらさらに5個追加する、という感じで。 最初は、文字通り手取り足取りですが、 次第に1人でも覚えられるようになるお子さんもいます。 5人に1人ぐらいの割合ですけどね(笑)。 もしかしたら1人で覚えられるようになるかもしれない、というぐらいの気持ちで、 取り合えず目の前のことを1つ1つ一緒に覚えています。 途方もない時間がかかります。が、お時間さえ頂ければ一緒に覚えています。
1人で覚えられるお子さん(ある程度宿題に取り組んでくれるお子さん)の場合は、 要求するレベルを上げます。 例えば、「江戸時代の将軍と政策・出来事を順番に言ってみて」とか、 「周期表の第1~3周期を言ってみて」とか。もちろん何も見ずにです。 英単語だったら、 CDを流しながら英語から日本語に、日本語から英語に瞬時にできるレベル、 余裕があるお子さんでしたら派生語まですらすら言える(書ける)レベルまで。 数学は問題を見たら瞬時に公式にあてはめて解けるレベルまでです。
道具が用意できたら、いよいよ家を建ててもらいます。 道具を用意するときは手取り足取りサポートしますが、 家を建てるときはできるだけ何も言わずに横で見ているように心がけています。 より正確には、ついつい何かを言いたくなってしまうので、 横を向いてお子さんのノートを見ないようにしています。 お子さんがその場で考えながら家を建てようと試行錯誤する、 この経験が重要だと思うからです。 たいていは途中でお子さんの手は止まります。 お子さんが困っていたら、そのときに少しアドバイスする。 それで、もう一度お子さんにチャレンジしてもらう。 しばらくすると、またお子さんが行き詰まる。 そこで、また少しアドバイスする。 そうやって、できるだけ自分の力で家を建ててもらう。 そこに勉強の楽しみがありますし、 未知の問題に遭遇したときに、 自分が持っている知識・経験に検索をかけ、 類推し考えて解決していく能力はこうやって能動的に勉強しなければ身につかないと思うからです。 国語・数学・理科では自分で考えることが重要なのは言うまでもありませんが、 一見暗記するだけに思える社会・英語でも同様です。 自分で立派な家が建てられるようになるまでこれを繰り返しています。
塾や家庭教師で成績が上がらないという場合、 おそらくこれが逆になっているのではないかと思います。 どういうことかと言うと、道具を用意する段階では「自分でやりなさい」と突き放され (確認テストぐらいはして下さるでしょうけど)、 家を建てる段階では、先生が家を建てるところ(手順)を見て覚えて、 こんな感じかな~と思いながら家を建てる。 そうすると意外と家が建ってしまう。 でも、この状態のままですと、自分一人では家が建てられないから、いざテストのときになると解けないという具合です。
ただ、私はこの教え方を批判するつもりはありません。 いかにうまく家を建てるか、この技(テクニック)をお子さんの前で披露するのも 塾の大切な役割なのですよね。 教える側にも高い授業料を払ってもらっているのだから、 少しでも付加価値をつけて有益な情報を提供したいという気持ちがあると思います。 また、そういうテクニックを求めて塾に通っているお子さんも多いですしね。 塾で教えていた頃に、お子さんから問題の解き方のコツを聞かれて、 「これはね、覚えるしかないよ」と答えたら、「そうですか」と冷たい視線を感じたのを覚えています(笑)。
以上私の教え方をご紹介しました。オーソドックスでつまらないと思われたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。 良い言い方をすれば正攻法、悪い言い方をすれば平凡・単調。 しかし、この単調なことを続けられるかどうかが勉強では大切だと私は思っています。 個別指導で教える側に求められるのは、教え方のうまさよりも辛抱・忍耐・根気なのかもしれません。 そういえば、4年ほど前、あるお母様から「先生は辛抱強いですね」と声をかけて頂いたことがあります。 そのお子さん(「ごぼう抜きだ」と学校の先生に褒められた女の子です)はリビングで教えていたので、 私が教えている間、お母様が近くにいらっしゃることが多くてほぼ毎回授業参観みたいな感じでした。 「辛抱強い」と声をかけて頂いたのは初めてでした。 この仕事を理解して頂けたようでとてもうれしかったです。